第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
百合にとってはただの事情聴取のハズが、警官にとっては願ってもない好機だったという訳だ。
幸いにして、聴取が長いと感じた菖蒲が羽交い締めにされた百合と事に及ぼうとしていた警官達を見て、店の者に声をかけたから良かったものの……
別に百合に特別な感情を抱いているわけではない。
ただ他人のように思えなかったのだ。
百合は、王宮で俺を待っているだろう白藤に似ているのだ。
見た目は百合の方が儚げだが、佇まいというか、雰囲気がどことなく落ち着くのだ。
そんな風に思えるのは、俺には白藤以外に居なかった。
だから、百合には何というか……
「義勇、さん……」
俺は……
百合に何をしてやれるだろう……