第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
「それで妹がお姉さんに恩返ししたいということで……」
「お姉さん、これ。もらってくれる?」
「何かしら?」
炭治郎の妹、禰󠄀豆子が朔に布地を手渡す。
「髪留めに使って下さい」
朔が背中に流れる髪を一まとめにする。
「義勇様、似合いますか?」
「ああ、似合っている」
浅黄色の髪に橙色の髪留めが揺れる。
元気一杯の朔には似合いの色合いだ。
「そういえば、菫(すみれ)さん。お姉さん方が探していましたよ」
菫と呼ばれた少女は朔より頭一つ低いくらい。
体つきは娼館で働いている割には貧相だ。
客観的に見て、朔の方が男受けする体つきである。
「うー、サボって無いもん!ちゃんと呼んでるもん!ね?お兄さん、お店来てくれるよね?」
何だか断りづらくなってしまった。