第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
「あ、待って下さーい!」
また、客引きか。
「貴様は誰だ?」
今度は何なんだ?
「俺は竈門炭治郎。そこの角でやってる水晶堂で下働きをしている者です」
水晶堂?
「胡散臭い商売なら結構だ」
「待って下さい、違うんです!」
「何が違うんだ?」
客引きに違いも何もないだろう。
「昼間、そこのお姉さんに親切にしてもらったって妹が……ほら、禰󠄀豆子」
「あ、さっきの!」
「朔の知り合いか?」
「お昼に串焼き食べた後で、その女の子がお兄さんとはぐれたということで……」
成る程。
俺が白藤の事を思い出している間、朔を見かけなかったのはどうやら人の役にたっていたかららしい。