第72章 向かう白、揺蕩う藤色
珠世の言っていることは真実のはずだ。
白藤も当時、縁壱から事の経緯を聞いている。
厳勝の事はひた隠しにされていたが。
きっと彼のことだから、私に言えなかったのだろう。
『鬼殺隊から鬼が出た』
そう言っている者達もいた。
でも、私はその話に聞く耳を持たなかった。
彼が帰って来てくれると、信じていたかったから……
そう、私の願望だ。
縁壱もきっと感じ取っていたんだ。
私を抱いてくれた、あの夜。
彼は私の悲しみごと、全てを背負ってくれたのだ。
「鬼舞辻、無惨……」
私も、あの人を鬼に変えたこの鬼が憎い。
でも、何故だろう。
何か引っかかる。
「白藤さん?」