第55章 スルタン企画 絶対君主には成れずとも$ 上巻
「あら、随分と浮かない顔ね」
「白藤か」
竪琴を腕に抱えた白藤を部屋に招き入れる。
「はい、お水」
部屋に入るなり、俺の機微に気付けるのはコイツくらいのものだ。
俺にとって彼女は完璧な宮女である。
ただ、最近の彼女は綺麗になったと思う。
七つの頃からの付き合いだ。
こちらとて彼女の変化は分かる。
まだ少女然としているあどけなさが残る面差しに、女性らしい曲線を描く体つき。
最近、宮殿内で白藤を妻にしたいという噂も幾つか耳に入っていた。
そう言えば最近、宇髄が……
「おぅ、冨岡。お前地味なくせに、可愛い子囲ってんだってな?」
と、言っていたが……
確かに、綺麗になったと思う。
庭園に咲く薔薇(そうび)とまでは言わずとも、梔子(くちなし)のような、目立ちはしないが、品のある花のような……
「義勇様?」