第55章 スルタン企画 絶対君主には成れずとも$ 上巻
「っ……」
顔が近い。
「どうしたんです?王との謁見、そんなに上手く……?」
何故だ?
何故、こんなにも心を乱される?
シャララン。
白藤の竪琴。
しっとりと、それでいて湧き出ずる水のように広がる音色。
とても心地が良いその音色に、がんじがらめになっていた心の糸も解けていくようだった。
「あぁ、良かった。いつもの……」
ぎゅっ。
演奏が終わると同時に、冨岡は白藤を抱き締めた。
「義勇…様?」
「義勇。お前だけはそう呼んでくれ」
「え?でも……私は妃姫じゃないし…」
「なら……」
『妃姫になれば良い』
「え、だって…!義勇…!きゃっ!」
そのまま、寝台に白藤を押し倒す。
「王に言われた、妻を娶れと」
「でも、私は宮女だし…」