第55章 スルタン企画 絶対君主には成れずとも$ 上巻
「場所を変えるぞ。とりあえず、俺の宮に来るといい」
冨岡の部屋は他の王子の部屋よりも家具が少なくこざっぱりしていたが、代わりに書物が多かった。
「わぁ…」
「どうした?物珍しい物はないぞ?」
「私、本が好きでして……」
「そうか。……とりあえず、食べながら聞くとしよう」
冨岡の手に握られていたサンドイッチを受け取り、一口頬張る。
美味しい。
干し肉の塩気と野菜の旨味が丁度いい。
冨岡も白藤も食べ終えてから話し始めた。
口に物が入っていると喋られないのはどうやら彼女も一緒らしい。
二人は色々な話をした。
お互いの境遇や家族について。
冨岡にとっても共通点の多い彼女との会話は新鮮だった。
二人が仲良くなり、二人の時間が長くなるにつれ、いつしか白藤は不死川の宮から冨岡の宮に。