第7章 廓の中$(炭治郎微、冨岡裏)
血鬼術、陽炎(かげろう)。私の香を吸わせた媒介を用いて相手に幻覚を見せる術。
「それなりに精度は良いんですよ?」
$$$
日の当たらない廓脇の古道(こどう)。
そこに宇髄、冨岡、白藤が集まって口を開く。
「お前、結局何人喰ったんだ?」
「人聞きが悪いですよ、宇髄様」
口元を隠して含み笑いをするような仕草をすれば、宇髄が胡散臭いと言ったふうな視線を向けてくる。
「特に変装している様子もないしな…」
「変装はしてませんが客に見せる芸事を変えてるんです。ときと屋では琴、京極屋では舞、荻本屋では三味線です」
存外に彼女が芸達者であることを知った二人であった。
「もともと一通り出来ていたのか?」
冨岡の問いに白藤が相槌をうつ。
「いいえ、もともとやっていたのは琴だけです」
後はしなりながら、その様に……
宇髄だけは、その後の顛末を易易と想像できた。
「……まぁ、それはともかく、定期連絡でしたね。雛鶴さんの情報はつかめませんが、女郎たちの噂で須磨さんは足抜け。まきをさんは体調不良で寝込んでいるとのことでした」