第51章 里帰り$
「師範の罠だ」
罠?
え、鍛練で罠?
困惑する白藤をよそに冨岡が彼女を問答無用で背負う。
「出来るだけ日が当たらない所を通る…」
「…お願いします」
むにゅん。
冨岡の背中に白藤の柔らかい胸が当たる。
「行くぞ…///」
顔を見られていなくて良かった。
何とか頂上までたどり着いた。
「うわぁ、素敵な眺めですね」
木陰から眺めても見劣りしない壮大な景色だ。
崖縁に季節遅れの山百合が咲いている。
ただ、土壌が悪く、地盤が柔い。
普段はそんなことも気にしないし、そもそも行こうとしない。
ただその時は渡してやれば白藤が喜ぶ。
そう思ったのだ。
取れる、か…?
ぷち。
山百合を一輪手折る。
取れ…
ずる。
足場の岩が崩れる。