第51章 里帰り$
「水柱様は夜伽の知識はございますか?なければお教えしながらになりますが」
「人並みには知識があります」
「左様ですか。体が動かない内は私がしますので、失礼致します…」
するり。
徐(おもむろ)に帯に手をかけたかと思えば、彼女は私の目の前で裸になり、布団の脇に座れば、私の頭を膝上に乗せ、乳房を押し付けてくる。
程好い弾力が頬に当たる。
「あら、いけない。血鬼術・魅了。これで私は貴方の望む姿に変わります」
話に聞いていた通りの血鬼術。
恐らくこれが、彼女を欲しがる連中の心を掴むのだろう。
だが、私の前にいる彼女に変化は見られない。
それはそうだろう。
私に想い人や婚約者は居ない。
私が美しいと思ったのは後にも先にも彼女だけなのだから。
どんなに手を伸ばそうと届かない。
彼女の心の氷はただの人では溶かせないのだと、炎柱から聞かされていた。
彼女を見て、私も悟ったのだ。
ここには居ない者を見つめる彼女を。