第51章 里帰り$
「義勇よ」
「はい?」
「藤姫殿に何をしたのだ?」
「特別なことは何も…」
「だが、あの変わり様は…」
「だとしたら、師範の代の柱の方々は白藤に誰かを重ねていたのでしょう」
「血鬼術・魅了。彼女が柱と閨を共にする際は必ず柱の好みに合わせ、個としての自分は出したことが無かった」
「魅了?」
「知らんのか?」
「俺は素のままの白藤しか抱いてませんから」
「素のまま?藤姫殿がそれを良しとしたのか?」
「はい。少なくとも今の柱たちは白藤の魅了を使いません」
何と……
鱗滝が再び言葉を失っていると。
「すみません、冷えて来たので豚汁をご用意しました」
コトリと二人の前に器を置く。
「お前も一緒に食べると良い」
「はい、ですがご一緒して良いんですか?」
「あぁ」
「はい、それでは此方に鍋をお持ちしますね」
土鍋を手にした白藤が戻って来て、自分の分の豚汁を用意する。
鱗滝は冨岡と談笑しながら食事をする白藤を不思議そうに眺めた。