第51章 里帰り$
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しょうがはみじん切りに。
「えっと、鍋に蛤と酒を入れてふたをして蒸す。沸騰したら火を弱くして蒸して……」
磯の香りがする。
調理は順調のようだ。
俺は師範の杯に白藤が持ってきた酒を注ぐ。
「義勇、お前もどうだ?」
さして酒は強くないのだが、師範からの酒の誘いだ。
断る理由がない。
「………頂きます」
師範から杯を貰い、チビりチビりと酒を口へ運ぶ。
「お待たせしました。蛤のしぐれ煮です。お酒のお供にどうぞ」
「これは忝(かたじけ)ない。まさか藤姫殿の手料理を食すことになるとは思いもよりませんでした」
「まぁ、大したものではありませんからどうぞ」
白藤は蛤のしぐれ煮を二人分取り分けて、二人に手渡してから、再び台所へと戻って行った。