第51章 里帰り$
「何を作るんだ?」
「蛤のしぐれ煮を、と思いまして」
「蛤?」
「えぇ、藤の屋敷馴染みの魚屋様から頂いたんです。砂抜きしてありますから直ぐに料理できますよ?」
「あぁ、師範が喜びそうだ」
「本当ですか?」
ニコニコと笑いながら料理をする白藤。
「冨岡さんは左近次様とゆっくり寛いで下さいな。積もる話もお有りでしょう?」
はい、お酒。とこれまた藤の屋敷馴染みの酒屋から仕入れたらしい酒を手渡され、居間へ移動する冨岡。
まるで勝手知ったる藤の屋敷の様にせっせと動き回る白藤。
それに……
『左近次様』
ここに来るのは本当に初めてなのか?