第51章 里帰り$
「藤姫殿?」
「あ、左近次様。台所を貸して頂いてもよろしいですか?」
「構いませんが、藤姫殿が料理を?」
「はい。と言っても大したものは作れませんが」
ふふ、と笑う白藤を見て鱗滝が声を失う。
あの藤姫が笑みを?
冷ややかな笑みしか浮かべたことのない藤姫の面影は今はもう無い。
それどころか……
『虚ろではありません…』
鱗滝の耳の内で先ほどの義勇の声が反芻される。
一体、何があった……?
「左近次様?」
「ああ、何ですかな?」
「生姜はありませんか?」
「畑にあるので、用意できますが?」
「良かった、では2つお願いします」
「承知しました」