第51章 里帰り$
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「いつも付き合って頂かなくても、大丈夫ですよ?」
夜遅くに帰宅する白藤を心配して、冨岡が毎日迎えに来てくれる。
「そうはいかない。夜は鬼が出る」
「それはそうかもしれませんが…」
私も鬼ですという言葉は一度飲み込んで、心配し過ぎですよと答える。
「お前は俺にとって……」
そこまで言って冨岡が押し黙ってしまった。
俺にとって………何だろう?
私にとって冨岡さんは…大切な人。
私のこと人と同じように接してくれますし、贈り物を頂いたり、好きだと言ってもらえたり。
まるで恋人のような……
恋人?私と冨岡さんが?
そんなこと……ありえない。
今はただ熱に浮かされているだけ。
きっと、ふとした瞬間に壊れてしまう。
だから、今だけは……この手を離したくない。