第48章 失意の夜$
ぽつり、ぽつりと白藤が語り出すのを冨岡は静かに聞いている。
「御館様は私を本部に置き、空き部屋に磔で拘束されていました…少しでも呪いを薄めて、生き長らえたかったのでしょう…」
「磔?」
「人と違い、私は鬼ですから…傷はすぐに癒えます。ただ記憶は消えません。頸を斬られる以外、鬼にとっての終わりはありませんから…」
「っ……」
「そんな顔なさらないで下さい…もう過ぎたことです…私が本部に行くのは御館様に施術をするためと今お話した記憶を御館様に封じて頂いているのです…」
「つまり、術の効果が薄れたと?」
「えぇ、恐らく御館様の御命も、長くは無いでしょう…」
風前の灯火か。
「今日はゆっくり休め…」
「あの…」
離れようとする冨岡の袖を掴む。
「一緒に寝ても…良いですか…?」
上目遣いに冨岡を見つめる。