第6章 藤に詩へば$(無惨裏)
お兄様はこれがどういう状態なのか分かっているんだ。
流石は博学でいらっしゃる。
するり。
お兄様によって私の来ていた着物が取り払われる。
私が熱いと言ったから、体を拭いてくれるのだろうか?
「一つ確認するが、白藤お前は想いを寄せている相手が居るか?」
「おります……」
それは、舞山様に他ならない。
でも、それを口にすることは許されない。
私は舞山様にお仕えする身であって、愛される立場ではない。
身分が違い過ぎる。
ただの女房に、お家を継がせる貴族は居ない。
「そうか。今からお前にすることは……いや、相手は私ではなく、その想い人だと思え」
いつになく、神妙な面持ちの舞山に彼女はこくりと頷いた。
できるだけ、優しく触れてやろう。
傷つくことが無いように。