第42章 藤の神子$(縁壱裏)
抱いて?
何も分からなくなるまで。
待ち続けて、焦がれているのは夢だと言って。
私は傍に居ると…
嘘でも良いから私の横で愛を囁いて。
「厳勝様…みち、勝…様…」
お慕いしておりました。
たとえ叶わずとも、貴方の腕の中に居られることが、私の幸せでした。
何度、私の体を縁壱様の昂りが貫いただろう。
瞬く間に夜は明け、隣に居たはずの縁壱様は私が起きる頃には藤の花の屋敷を後にしていた。
非道い話だ。
居もしない人を想って…あまつさえ、その方の名を呼ぶなど…
分かっていて受け止めてくれた縁壱様に合わせる顔がない。
だって、そうでしょう?
これで全てが罷り通るほど、現実は都合良くは出来ていない。
寧ろ絶望に打ちひしがれるものだ。
ただ最後に私を繋ぎ止めてくれたのもまた縁壱様だった。
私もまた、彼に生かされたのだ。