第42章 藤の神子$(縁壱裏)
「済まない、私はあまり慣れていないから…何か不快だったら言ってくれ」
「いいえ、私も…今日だけは…厳勝様とお呼びしても?」
「ああ、気が済むまで呼ぶがいい」
縁壱が白藤の着物を脱がせていく。
厳勝様と同じ顔、痣、同じ声音。
「厳勝、様…」
唇を塞がれる。
ずっと呼びたかった。
何処に行ってしまったの?
どうして…
「で…」
置いて行かないで…
涙が一滴、頬に伝った。
苦しい。
痛い、痛いと心が泣いている。
このまま引き裂けそうなほど、痛みが増していく。
貴方がそばに居ない。
それを自覚する度、哀しみが胸を締め付けて、不安で立っていられなくなるの……