第5章 偽兄妹の交わり$(宇髄裏)
「そうだねぇ。炭ちゃんにはちょっと早い話だけど、"足抜け"っていうのはねぇ、借金を返さずにここから逃げることさ」
逃げる……
要は駆け落ちか。
「見つかったらひどいのよ。吊るされたりするんだから…」
「そうなんですか……」
「好きな男と逃げきるひともいるんだけどねぇ。大体は連れ戻されちゃうけどね」
足抜けは、鬼にとっては実に都合のいい口実である。
「噂話はよした方がいいですよ?女将の耳に入ったら…」
「鯉夏花魁!」
女郎達がいそいそと移動を始める。
花魁はその店の看板娘。
当然、女郎達の中で一番位が高いのである。
「聞かなかったことにして下さいね?」
「ウチの遣り手婆、ひどいから……」
「違いないわね。行きましょ!」
「怖い、怖い」
鯉夏花魁と炭子を残し、女郎たちが退散する。
「あの、鯉夏花魁。その…須磨花魁は本当に足抜けしたんですか?」
「!、どうしてそんなこと聞くんだい?」
「須磨花魁は私の…私のあ……」
怪しまれていると感じ、炭治郎の顔がとてつもなくおかしくなっていく。