第2章 藤の幻$(宇髄裏)
「何だぁ、急に。つーか、お前気配が鬼じゃねぇか?」
入室するなり、宇髄には正体を見抜かれてしまった。
が、彼女は慣れているのか、臆する様子もなく、頭を垂れたまま話を続ける。
「半人半鬼にございますれば。本日は音柱様の慰安に参りました」
「半人半鬼だぁ?俺には妻が三人いる。女にゃ不自由してねぇよ」
あからさまに不機嫌になる宇髄。
妻がいるなら当然の反応である。
ただ、一夫多妻制であることは彼が元々忍の一族であるゆえだろう。
「本日の治療は湯治でございます」
「おい、聞いてんのか」
宇髄の言葉を他所に湯桶と浴衣を用意する白藤に怪訝な視線を向ける。
「お相手が私では不服ですか?」
上目遣いで、しおらしく。
それこそ、他の者であれば、魔が差す様な蠱惑的な仕草で。
「いやいや、そうじゃねえだろ。そもそも鬼は藤の花が嫌いなはずだろう?お前は平気なのか?」
鬼が藤の花を嫌っているのは周知されている。
「はい、特には。私は人の地肉は喰らいませんので」
「あぁ?じゃあ何を」