第2章 藤の幻$(宇髄裏)
藤の花の屋敷にて音柱静養中。
鎹烏の報を受け、別の藤の花の屋敷へ向かう一人の娘。
藤の花の屋敷は各所に点在している、鬼殺隊の休養所である。
その屋敷では隊士の為の衣食住を補う目的で、医師を派遣させることもある。
ただ、移動中の彼女は医師では無い。
その容貌は銀の長髪を首の横に纏め、瞳は藤を思わせる淡い紫。
たおやかな胸に、緩やかな曲線を描く肢体。キメ細やかな白い肌。
ただ一つ他の者と違うのは、彼女は陽の光の下を歩けぬ者ということ。
闇夜の中を移動する彼女の目的はただ一つ。
藤の花の屋敷に着くやいなや、彼女は身なりを整えて、音柱の居る寝所へと向かう。
まるで旅館に侍る女御の様に、三つ指を揃えて彼女は頭を垂れた。
「白藤と申します。音柱の宇髄天元様でございますね?」