第37章 二人
「姉さん。俺も次に繋ぐよ。姉さんと錆兎の想いを」
「錆兎様?」
「ああ、後で話す。共に鱗滝さんの所で修行をして、同じ年の選別試験を受けた。俺にとっての英雄で一番の朋友(とも)だ」
「お聞きしたいです……」
涙を拭いながら、再び冨岡と手を繋ぐ。
教えて欲しい。
私の知らない貴方のことを。
そうして互いの事を知り合って、行き着いた先に幸福が芽吹いていることを願わずにはいられない。
願わくは戦いの終わったその未来(さき)も貴方の隣に居られるように。
「帰るぞ」
「はい」
再び、水の屋敷に向かって歩き出す。
吹く風が冷たくなっても、来た時よりもほんのり胸の内が温かいのは、隣の彼のおかげなのだと、白藤は思った。
月が照らす中、二人の影は寄り添ってゆっくり歩みを進めるのだった。
-了-