第37章 二人
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「ここだ」
鬼殺隊の共同墓地とは別に鬼殺隊の家族の墓も本部の近くにあり、二人はそこを訪れた。
「今、お水を用意しますから。冨岡さんはおはぎ、お供えしてあげて下さい」
桶を用意し、川下へ歩いていく白藤。
「姉さん。ずっと来れなくて、ごめん。俺ここに来るのが怖かったんだ……」
あの時、俺が死ねば良かったと何度も思った。
姉さんはようやく結婚が決まって、これから幸せになるはずだったのに。
俺が姉さんから全てを奪ってしまったから……
それに錆兎のことも…
「冨岡さん。お水、お待たせしました。ずいぶんお話されてましたね」
「ああ」
その時の冨岡の表情はにわかに昇り始めた月の燐光の影になっていて、あまり読み取れなかった。
ただ静かな水面を思わせる青い瞳がこちらを眺めている。
ゆっくりと冨岡が白藤の手を握る。