第37章 二人
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食事も終わり、墓参りに持参する為におはぎを作り始めた白藤。
「すみません。時間大丈夫ですか?」
「問題ない。寧ろ夕刻の方がお前には都合が良いだろう」
ぽんと冨岡の手が白藤の頭に乗せられる。
「でも遅くなると鬼が…」
「誰が隣にいると思っている…」
確かに。
柱が護衛など、相当優遇されている。
「お前が心配することはない……」
その背中は先程よりも幾分か広く見えて、白藤の口元も自然と綻んだ。
「はい。では、参りましょうか。準備もできたことですし」
おはぎを手にし、冨岡の手を握り、二人で屋敷を出る。
「冨岡さんのお姉さん、どんな人だったんですか?」
「物腰が柔らかくて笑顔の似合う人だった。……芯が強いところはお前と一緒だな。祝言の前の晩に鬼に喰われて亡くなったんだ」
「そうですか。祝言の前に…でもきっと、冨岡さんのお姉さんですから素敵な方だったんでしょうね」