第36章 130,000PV御礼読切 麗しの君は
「お、覚えていやがれぇぇ!」
突然逃亡する兄貴分に手下すら少しの間呆然とする。
一拍程間をおいて、我に返った手下がようやく走り出す。
「行くぞ」
「はい」
さりげなく白藤の手を引いて歩き出す冨岡。
へぇ、意外と隅に置けないな。
「で、簪どうする?お姉さん」
「あぁ、やっぱり鼈甲下さいな。苦心している姉に渡すから…」
少々芝居がかった体で店主に話しかけると。
「お姉さん。なんて清らかな…ごめんよう、てっきり柄の悪い連中の女だと思った俺を許してくれぇ…」
おいおい、泣くなよ!
「これも一緒に渡してやんな」
「何、これ?」
「うちで作ってる硝子細工さ。こっちは江戸切子、こっちがとんぼ玉を使ってるんだ」
「じゃあ、三つとも買います」