第36章 色欲に溺れて$ (宇髄&冨岡裏)
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宇髄の屋敷。
門を潜ると出迎えてくれたのは意外にも隠だった。
「今奥さんたちは入浴中でして。来客があった場合には取り次ぐように言われてるんです。水柱様はどのようなご用向きで?」
「……任務の件で宇髄に聞きたいことがあるんだが」
嘘も方便。
あれこれ聞かれても厄介なだけだし、ここは他の柱の屋敷だから下手なことは出来ない。
「そうだったんですね。柱の方であれば中へお通ししても大丈夫でしょう。音柱様は中庭においでのはずです」
「承知した」
挨拶もそこそこに俺は屋敷に足を踏み入れた。
水柱の冨岡様が見えるなんて、今まで無かったなぁと隠の風見志郎(かざみ しろう)は、のほほんとしていた。
彼のあだ名は風見鶏。
気の向いた時しか仕事をしないと言われる彼だが、宇髄に気に入られている長所が一つ。
それは、本物の忍以上に五感が優れていることである。
伊之助の野生の勘とまではいかないが、彼もその長所を生かし、諜報向きであるがために、宇髄の使いとして屋敷に出入りしているのだ。