第32章 半天狗の最後
げほっ。
煙を吸って噎せる白藤を玄弥が背負って移動する。
「やっぱ、柱にゃ敵わねぇなぁ」
「玄弥、く…」
ぎゅるる。
はっ。
「危ねぇ!」
またも玄弥の隙を着いた形で竜が迫って来る。
煉獄の炎でも捌ききれなかったものが白藤の腕を捉える。
「藤血の娘。貴様はあのお方に献上する」
憎珀天の思念が竜を通してこちらに伝わってくる。
怖い。
体に力が入らない。
ああ、だめだ。
こんな時でも思い浮かぶのは…
冨…
ズギャ!
滑り込んできた人物によって、傷をつけられなかった白藤だが。
「何、勝手に諦めてんだぁ」
ギチギチ。
宇髄の左腕の先が血で斑に染まっている。
もしかしたら、本当に千切れてしまっているかもしれない。
「宇髄様、腕が!!」
「あー、こりゃ派手に喰い荒らされたわ。でもま、お前が居りゃあ何とかなる!だろ?」