第30章 濃密な一時を$(冨岡裏夢)
「えっと…冨岡さんは何故こちらに?」
見たところ、目立った傷は見当たらないので、治療目的でここに来たわけではないようだ。
「胡蝶に…」
「胡蝶様?」
「胡蝶に藤の花の屋敷に行けと言われた」
「………」
それは……仕組まれたという、ことだろうか?
「白藤…」
「はい!」
急に呼ばれて声が上擦ってしまった。
「お前、どこか悪いのか?顔が赤い…」
顔が近っ!!
え、急っ!!
なんでこんなに過剰に鼓動が高鳴るのか。
どうして彼でないとその状態にならないのか。
長い間忘れていた淡い思い。
痛くて苦しくて、でもとても愛おしくて……
ぴとっと額に冨岡の手が当てられる。
「熱は……?」
「ぴっ…!!」