第26章 激動
「時透!」
「貴様には回避されたか。なるほど、なるほど。面白い、ヒョヒョ…ヒョ…」
「時透を解放しろ」
一息で距離を詰め、玉壺の喉元にチャキと刀を突きつければ、焦ったように声を上げる玉壺。
「ヒョヒョ、私を殺しても、水獄鉢は壊れない。それどころか、壺に囚われている鍛人や鬼の娘の人質も壺から出られなくなるぞ?」
それは本当か?
上弦ならばそれも可能なのか?
いや、しかし…
鬼が嘘をつくのは常套手段である。
ぐっ。
「その証拠はない」
俺の技では時透を傷つけてしまうかもしれない。
それに、時透に気を取られているうちにこいつが何かしら行動をしないとも限らない。
よって時透には悪いが、どうにか自力で脱出してもらうしか手はない。