第20章 終ぞ、願いは叶わずとも$(継国巌勝裏夢)
藤の花の屋敷、中庭にて。
「巌勝様」
「何だ、白藤」
ここでは無い、どこかを見つめていた彼。
「巌勝様が心ここに在らずといった風情でしたので」
「……お前はよく私に気が付くな」
「私は…」
私自身の考えではなく、縁壱様の助言なのだが。
『兄上が物思いにふける時は決まって空を見上げている』と。
「少し、昔を思い出していたんだ…」
「昔、ですか?」
「あぁ、まだ縁壱と一緒に暮らしていた時の事だ」
「そう言えば、お二人はご兄弟でしたね」
周りの者は見た目が似ているだけだと巌勝を揶揄するが、技量は引けを取らない。
縁壱が日、巌勝が月。
相反しているようで、けれども互いに背中合わせでお互いを守り合える存在なのだと白藤は信じている。
「ああ、私が出来損ないの兄だ」
「そんな…」
「アイツはいつも母にくっついていて、私はそれをただ甘えているだけだと思っていた」