第80章 家族の形$ 其の二
「義勇さんはそちらの風呂敷に着替えを詰めて下さい。私と勇輝哉の分はこちらに詰めますから」
任務の時の要領で着替えを用意してから、隊服に手を伸ばそうとして、はっとする。
反射的に手を伸ばしてしまうのだ。
それだけ、日常的に着用していたものだった。
無惨を倒してからというもの、隊服は意味をなさないものとなり、改めて私服をと考えて数人の隊士は途方に暮れた。
女隊士達のように服を用意するという事に無頓着な男達は多く、給金は食費と酒代に費やしている者が多かったからだ。
恋人持ちの者や妻帯者は相手方が選んでくれた物を着用するという流れも多く、例のごとく冨岡もそれに含まれるのであった。
隊服の代わりに濃紺に墨流しの刺繍が刻まれた着流しを風呂敷に包む。
白藤が選んでくれ、彼女が見蕩れて真っ赤になった一着である。