第77章 契りて繋がる縁たち$(冨岡裏)
違う、気付きたくなかった。
気持ちに蓋をしたのは自分なのだから。
だって、気づいた時には私が入る隙間は無くなっていて。
ずっと独りだった冨岡さんの隣には白藤さんがいて。
気付いてしまった。
私が欲しいものは全て彼女が奪って行ってしまったことを。
私の大好きなお姉ちゃんを助けられなかったくせに、私の好きな人まで取るなんて、憎くて堪らなかった。
だから、彼女の身体で色々な薬を試して鬼に効く毒を開発した。
奪われるくらいなら利用してやろうと思った。
許しを乞うぐらい痛めつけてやりたかった。
でも、あの日。
行方の分からなくなった白藤さんを探す冨岡さんを見て、もうこの気持ちは叶わないのだと理解してしまったから。
このまま、見つからなければいいと思った。
彼に近づけるならと。
でも、鬼に孕まされて居たのを見つけても、彼は白藤さんを見捨てなかった。
悔しかった。
私には見向きもしてくれないのに。
だって、彼女は鬼なのに……
私を見て欲しい。
その目に映して欲しいのに……
それは、もう叶わない……