第79章 咲くは朱なれど散るは白
術士も呪詛師も存在しない世で生きる事など……
それはまるで、方術師である自らの存在を否定する生き方だ。
そんなことは出来ない。
何年も何年も鍛錬して、菅生(すごう)の郷から出てきたのだ。
里長になることも、婚約者も全て里へ置いて、それでも京へとやって来た。
都も帝も神々も、全てが御座(おわ)す京の都で俺は皆に認めてもらいたかったのだ。
安倍晴明、お前のように。
晴明と同じ事が出来ぬなら、反対の依頼を進んで受けた。
あの男に勝って、私が随一だと示したかった。
だが、その夢もあっけなく終わりを告げた。
安倍晴明は自身の孫を守るために残りの寿命をかけて術を行使し、その後死に至った。
結局、俺はあの男に一度も勝てなかった。
晴明亡き後の世の中は酷く退屈で、全てが灰色に染まっていた。
あの時までは……
鬼舞辻無惨を作りあげた時、私の胸は高鳴った。
なんという完璧な存在だろう。
十二神将の主はもう居ない。
ならば、刃向かうものなど恐るるに足らない。
そうして、鬼は増えていった。