第75章 君と二人で永遠(とわ)に眠るる
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それから、もうずーっと後になって。
俺はもうシワシワの老人になっている。
「くいな達には、不義理な男だと思われるだろうな……」
俺の命はもう、長くないだろう。
最後は家族に看取ってもらうのが普通だということも知っている。
けれども、最後ならばせめてもう一度だけ、彼女に会いたい。
冨岡の心のどこかにはずっと白藤が居て、いざ最後という時になって思い出した。
いや、後ろ髪を引かれた気がしたんだ。
まだ髪の長かった当時の自分に。
これで、本当に良いのかと。
「………っ、白藤……起きてくれ……」
本当はとうの昔に死んでしまっているのではないかと思うくらい、彼女の瞼は固く閉じられていて……
あぁ、やはり彼女に声は届かない……
「……好きだ……ずっと……」
彼女の頬に冨岡の涙が伝う。
藤の文様が消えなかったのは、きっと彼女が術をかけ続けていたからだ。
「もう、充分に長生きした。だからもう、大丈夫だ……」