第73章 乞い願う、光を求めて
無限城から外に出た冨岡は陽光から白藤を庇いながら、街の路地裏に滑り込んだ。
陽光が完全に遮断される訳では無いが、日向よりはましだろう。
それに、これが最後になるかもしれないならば、彼女との時間を誰にも邪魔されたくなかったというのもある。
「………」
彼女は瞼を閉じて眠っている様に見えた。
「聞こえるか?白藤……」
どうにか絞り出した声は自分が思っていたよりもか細いもので……
このまま、目を覚まさないのだろうか……
俺はまた、大切な人を失うのだろうか。
彼女の体を抱え直し、唇を重ねる。
奇跡とやらが本当に有るのならば、俺が願うのは彼女と二人で笑い合う未来だ。
「起きろ、白藤……夜明けだ」
冨岡の声掛けに反応は見られない。
それでも……
「お前のお陰で大きな怪我無く、地上に戻ってこれた……皆無事だ……」
ぎゅっと彼女の手を握る。
「頼む……」
「………っ、さ……」
「……?」
「……ゆぅ、さ……」
「……白藤?」
「義、勇……さん……」