第73章 乞い願う、光を求めて
だが、それと同時に語ることの出来ない思いも去来した。
分かっている。
白藤が居たとしても、母が生き返らないこと。
父が会いたいと願うのは、生きて帰った俺では無いことも。
そんな父を変えたのは、白藤だった。
彼女があの日、屋敷に来てくれていなかったら、父はあのまま酒に溺れていたかもしれない。
瀕死の重体で飢餓状態になった彼女が鬼に抱かれ、身重の体で不安であったはずなのに。
腹の子ごと斬って欲しいと頼まれた折は彼女の悲痛さがひしひしと伝わってきた程だ。
そんな彼女だから、幸せになって欲しい。
笑っていて欲しい。
出来るならば隣に在りたいと、そう願う程に。
だが、彼女が選んだのは俺では無い……
進む先に待つ未来がどんなものかは分からない。
けれども強くありたいと心を律する杏寿郎を見て、炭治郎も再び歩み出す。
自身も杏寿郎の様に強くなりたいと願って。