第76章 違えし縁
「だとすれば、どうしたと言うのだ」
「いいえ、特には」
この薬師、鋭いのか、抜けているのか。
「誰しも理由があるものです。……さて、顔色から見るに血色が悪いようですな。昨夜は寝つけませんでしたか?」
「………関係ないだろう……」
「病は気からとも申しますが、休息を摂ることも必要ですからな。瞼の内が白い……血の気が足りないのでは無いですか?」
「………薬で治るのか?」
「いえ、食事で補って頂きます。鳥や豚の内臓を食べられるのが良いでしょう」
「臓物は……穢れだろう……」
「穢れを気にされるとは。やはり貴族の方でしたか」
やはり……?
「立ち居振る舞いで、位の善し悪しは分かるものですよ」
「薬師、名は何という?」
「野の草を使うしがない薬師です、そうですな。名乗るとすれば、私の事は『桂木』とでもお呼び下されば」
「分かりやすい、偽名だな」