第76章 違えし縁
庶民に近い様相であばら家を後にした舞山が、左京へ向かうために朱雀大路の近くへと差し掛かった頃だ。
一人の男に会った。
背中に籠には野草であろうか、変わった形の葉やら花やら。
行商人だろうか。
男は舞山に気付くと動きを止めた。
「見ない顔ですね」
やはり商人なのだろうか?
顔を見て判断できる程度にはこの地区に詳しいのかもしれない。
「知り合いに会いに来ただけだ。すぐに戻る……」
舞山がそのまま男の横を通り過ぎようとした。
「貴方、顔色が……」
確かに、昨夜の宴の後からは食事を摂っていないし、睡眠もろくに取れていない。