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鬼滅の刃R18 藤の花嫁

第72章 向かう白、揺蕩う藤色


『白藤にお任せ下さい。お兄様』



藤の花の枝を渡した時、彼女はとても喜んで。



「白藤……?」

「……何、故?」



聞き間違えるはずがない。


この声は……



「舞山様……」



かつて私が女房として屋敷勤めをしていた時の主。


お兄様のように慕っていた舞山様だ。



どういうことだ……?


薬師を殺めたあの日、私は白藤を置いて屋敷を出た。


彼女が私と同じ薬を飲み、鬼になったこと。


そのせいで、自慢の黒髪が白くなったこと。


陽の下を歩けなくなったこと……


全て私の責任だ。




藤の花を見ると、彼女を思い出してしまう。


純真で、可憐で、でもどこか香るように美しい彼女にいつしか惹かれていた。


お兄様と呼んでくれる彼女を私は欲した。



けれども言えるはずがない……


口にしてはいけない想いなのだ。



血に塗(まみ)れたこの手で、彼女の好きだった花を汚すわけにはいかなかった。




ー了ー



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