第72章 乞い願う、光を求めて
「主人に歯向かうとはいい度胸だ……オンキリキリ……」
指で刀印を作り、呪を唱え始める道満を見て、白藤が反応する。
「お逃げ下さい!!」
冨岡にではなく、無惨に対して向けられた言葉に一同は瞠目する。
白藤が鬼舞辻を逃がそうとしている。
当然鬼殺隊からすれば、立派な反逆行為である。
だが、柱たちは動けなかった。
「その呪(まじな)いを聞いてはいけません!!」
必死に叫ぶ彼女を誰も止められなかった。
それは皆一様に、彼女の姿に昔の自分を重ねたからだ。
鬼に殺された大事な人に手を伸ばす過去の自分と白藤の姿が重なる。
「危ない!!白藤さん!!」
無惨の元へ向かって走る白藤を止めるべく、入り組んだ通路から抜け出てきた炭治郎が無惨に向けて刀を振るう。
「駄目!!炭治郎君!!」