第76章 違えし縁
あの日、白藤が出産の為にと逗留(とうりゅう)先に炎柱邸へ訪れた折に彼女に喝を入れられるまで、私は本当に腑抜けだったのだろう。
無気力で、無関心で。
酒だけが、心の拠り所になっていた、ちっぽけな自分自身が一番、許せなかった。
杏寿郎にも、千寿郎にも、本当に申し訳ないと思っている。
自分だけが悲しみの深みに囚われていたのだとばかり……
母親を亡くした息子達とて悲しくない訳が無いのに。
「父上!!」
「輝利哉……勤めを果たしなさい……後は、頼んだよ……」
「そんな……」
御館様は瞼を閉じると、そのまま眠るように意識が途絶えた。