第76章 違えし縁
「しっかりなさいませ、お館様……」
あの爆発で御母堂のあまね様、ひなき様、にちか様がお館様同様に生死の境にいる。
「槇寿郎……」
「此処に……」
これが耀哉から直接聞ける最後の言葉かもしれない。
「槇寿郎。私もあまねも、もう助からない。すまないが、輝利哉を頼む。導いてやってほしい……」
「息子の教育もろくに出来なかった私には荷が重すぎます……」
「そんなことは、無いよ……君の事は白藤から聞いていたから、ある程度の事情は聞いている、よ
……身内の死を、乗り越えるのは…辛いことだ。癒えるには誰しも時間がかかる……」
瑠火が亡くなってから、浴びるように酒を飲み続けた。
要は逃げたのだ。
悲しみから。
愛しい妻のいない現実から。
逃げ続けて、柱を降りた後。
程なくして杏寿郎が炎柱に就任した。