第75章 折れない心
『共に逝こう』
「そうですね。私も、共に眠ります……」
白藤がゆっくり瞼を閉じる。
ざあっ。
春一番のような強い風が吹いた。
空気が変わり、言い争っていた不死川と冨岡もふと押し黙った。
傍らに居た白藤がいつの間にか瞼を閉じて眠りについている。
「白藤……?」
彼女からの応えは無かった。
ただ、その寝顔が安らかで、その場にいた誰もが息を飲むような美しさだった。
そう、まるでーー
「藤の花嫁のようだ……」
煉獄が呟き、少しして。
陽光と共に彼女の亡骸は消え去った。
その後。
彼女の亡骸が最後にあった場所から新たな木の芽が出た。
藤の若木らしい。
最終戦が終わり、鬼のいない世界となったが。
一人だけどうしても表情の冴えない男が居た。
「冨岡さん!!御館様がお呼びだそうですよ」