第80章 家族の形$ 其の二
胡蝶編
「んーっ。後は飲み薬だったかしら?」
蝶屋敷の主、胡蝶しのぶは多忙である。
鬼殺隊の柱着任時とて、負傷者の治療に当たる蝶屋敷を切り盛りしながらその任を全うしてきた。
小柄な体格の為に鬼の頸を斬れない彼女が編み出した戦術が、鬼を殺す毒を刀に仕込み、その毒で倒すというもの。
数々の毒を試し、『藤の毒』が有効である事に気づいた頃には彼女は薬学においての知識量は医療に従事出来る者と対等に会話ができる程の域に達した。
となれば当然、彼女の興味は『負傷者を癒す薬』と『鬼を殺す毒』の二つに絞られ、その他の事には一切関心を持たなかった。
殊更、男女の恋愛というものについて、彼女は他の女子よりも秀でた容姿であるにも拘わらず、男性経験など皆無であったのだ、ほんの少し前までは。