第75章 折れない心
「炭治郎」
いつになく蠱惑(こわく)的に呟いてみる。
出来るだけ扇情的に、艶やかに。
惹き付ける為に。
「どこを見ているの?」
炭治郎と歳の近い、カナヲに似せた声音で囁く。
「炭治郎、戻ってきて……」
どうせこの空間は珠世の術で視界が遮断されている。
あちら側からは炭治郎と白藤の様子は見えない筈である。
「カナヲ。俺は……義勇さんから白藤さんを奪いたいんだ……」
「え……?」
炭治郎の言うことが正しいのならば。
彼は私に懸想していたということで……
確かに一度過ちはあった。
でも、あれは確か私と義勇さんの情事を見たがための興味からだったのではと考えていたのだが……
そういった動揺から白藤の術が揺らぎ、魅了が解けた。
「白藤さん……」