第75章 折れない心
欲しい。
それは、炭治郎にとって初めての欲望に近い感情だった。
家族や親しい人達から愛して欲しいと望んだことは無かった。
自分が愛していることに変わりは無いし、何より信頼の匂いがするから安心出来た。
でも、彼女の匂いはほとんどしなかった。
藤の屋敷に居るから藤の匂いがするのだと思っていた時期さえある。
いつも淑(しと)やかで、働き者で。
ただ眺めていただけの彼女が、冨岡さんに抱かれているのを目にした時に、それは芽生えた。
盗み見る形になったとはいえ、自分がいる状況で、浴室で睦(むつ)み合う二人を見て。
その時、俺は初めて自慰をした。
控えめな彼女の豊満な身体を見て。
頬を赤らめ、律動に合わせて、自らも腰を揺らしてしまう彼女。
そしてその彼女を抱く冨岡の怒張した昂りが何度も彼女の膣中を蹂躙する様を見て。
俺も彼女を抱きたいと、何より自分の身体が望んでいた。
彼女の笑顔が自分に向いてくれないかと、ひたすらに願った。
浅ましい願いだと思いながらも、眠る前になると彼女の痴態を思い出し、その日から、次第に自慰の数が増えていった。