第71章 向かう白、揺蕩う藤色
「さすがは元炎柱様ね」
「と……まぁ。その話はまたおいおいだな。音の呼吸 肆ノ型 響斬無間!!」
げほっと咳き込みながら、伊黒が顔を出す。
「おい、宇髄。火薬を使う前に一声かけろといつも言っているだろう…」
「そうだったな。悪い悪い」
言葉とは裏腹に悪びれた様子なく笑う宇髄を伊黒は睨みつけて、大きなため息をつく。
「全く……お前は配慮に欠ける……」
「お前に言われたくねぇわ!!」
甘露寺以外に伊黒の恩恵を受ける者もそういないのである。
「伊黒さん、危ない!!」
「止せ!甘露寺!!」
目玉が寄せ集まって、大きな腕のような形になると、甘露寺の刀を防いで彼女の体を抱き上げた。
「きゃあ!!」
「伊黒!ちゃんと受け止めてやれよ!!もう一発いくぜ。音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々!!」
目玉の群れで構成された腕のようなものから甘露寺を救出すべく、宇髄が技を放つ。
火力という名の破壊力から目玉が次々と焼け落ち、甘露寺を掴んでいた部分も崩落をし始める。
受け身を取ろうにも思うように動けないでいる甘露寺を伊黒が受け止めに行く。
「無事か、甘露寺!!」