第71章 向かう白、揺蕩う藤色
っ、彼女の前で、倒れる訳にはいかない。
「おい、鬼狩り!」
別の通路から出てきた少年が伊黒と甘露寺を呼び止めた。
「誰だ、貴様は……」
「俺は愈史郎。珠世様から頼まれてここへ来た。俺の目を貸してやる!だから俺をこの城を動かしている鬼の元へ連れて行け!」
「え?何、貴方……」
見た目まだ子供なのに、何だかとっても偉そうだわ!
「急に出てきた小童如きの戯言に付き合う謂(い)われはない!!」
はっきり断わる伊黒さん、男らしくて素敵!!
きゅんきゅんしちゃう!!
「五月蝿い!!お前たちにだって勝算は無いんだろ!四の五の言わずに俺を案内しろ!!」
愈史郎の暴言を聞いて、甘露寺の長女としての矜恃が反応した。
「こらっ!!ダメよ、坊や!!いくら何でも横暴過ぎるわ!!伊黒さんに謝りなさい!!」
「黙れ、牛女!!」
「牛女ですって!?」