第75章 折れない心
こうして道満と無惨、白藤の歪な因縁が廻り始めた。
無惨は人の道を外れ、鬼の軍勢を増やして行く。
道満は晴明に負けぬようにと自らの修行に励んだ。
ただ一人、放り出された白藤を除いて……
彼女とて、全ての記憶が蘇った訳では無い。
半人半鬼と言えど、流れ着いた果てにやってきた鬼殺隊で藤の屋敷に留まり、幾代もの柱の傷を癒してきた。
人らしくなれたのは戦国時代の、あのひと時。
けれどもいくら待っても巌勝は帰らなかった。
それから時折柱の誰かに惹かれはするものの、彼女はそれを口にはしなかった。
ーー 人ではない自分が、恋をしていいわけが無い ーー
ずっとどこかでそう思っていて。
迷う時間が長くなるだけで結局は叶わぬ想いに打ちのめされて。
だから蓋をした。
自分の心に。