第75章 折れない心
使役とまでは行かずとも、せめてもの折に力添えを願いたいと希(こいねが)ったが、かの龍神には
『人の心の移ろいと同様に神の心も移ろうもの』
とのお言葉を拝した後は、何も起こらず。
どうやら袖にされてしまったと気づいてからはようよう各地に赴くことにした。
ある時は山へ、ある時は滝へ。
時は経てども、思いの丈を超えるほどの力も財も配下も持てず……
そんな折だ。
道満は内裏で舞山と対面する。
久方振りの殿上人(てんじょうびと)候補と名高い人物からの依頼に道満は意気込んだ。
この依頼は失敗出来ない。
直ぐさま産屋敷の屋敷に式を飛ばし、白藤の様子を具(つぶさ)に観察した。
白藤はよく働く女房だ。
食事の準備も、洗濯も、繕いものも、寝る間を惜しんで屋敷の主人である舞山の看病まで。
その時、道満は閃いたのだ。